2021年8月「Language of flowers」2021年8月ギャラリー犬養(札幌)

■Statement

 新型コロナウィルスの感染拡大によって、世界の様相が刻々と変化を続け、従来の価値観が大きく揺らぐ激動の時代となりました。命について、人間社会の在り方について、これまで以上に各人が問いかけられる場面が多く発生しているように感じます。私たちは大自然の中で各々が自分の命を守りながら生きるのではなく、私達の作り上げた人間社会に属しています。それならば、弱い立場の人を斬り捨てるような社会の在り方には命を守れないという点で大いに疑問を感じます。従来の社会の仕組みに身を委ねることに疑問や不安を感じるのであれば、そこに何が欠けていて、何を大切にしたら良いのかが見えてきます。新たな時代や社会を創造することは本来、夢や創造に溢れた素晴らしいものなのではないかと私は考えています。

 そこで今回の展示では、私の考えた「大切にしたいこと」を花言葉に対応させて、13の花のオブジェを制作しました。もちろん皆様にはきっと別の大切なことがいろいろあると思います。決して押し付けのような形ではなく、私の大切にしたいことの色々を、ただそこにある花のように眺めていただけましたら幸いです。

 花言葉は植物に象徴的な意味を持たせる慣行として19世紀の西欧で生まれ、日本でも大切な想いを伝える言葉として使われてきました。近年、花言葉は商業的な利用もされる等して新たな花言葉がつけられたり、国による違いもあって、一つの花にも様々な花言葉があります。今回は1884年にイギリスで出版されたKate Greenway ”Language of Flowers”を基本に花言葉を採用しました。また、13とはマヤ文明や数秘術で絶大なパワーがあるとされながらも、庶民が使うことを権力者が嫌ったために忌み数にされたとも言われる数字です。新しい時代への祈りを込めてこの数字を採用しました。

 今回のテーマは、今年に入って制作した「尊厳」をテーマとする青い花のアクセサリーのシリーズを更に掘り下げることで生まれました。本展示に向け、このシリーズも新作を数点ご用意しました。身に着けるものにも祈りは宿ると考えて、アクセサリーを作っています。

 

ディストピアのその先の、新たな世界の創造を夢見て

2021年8月4日 Furukawa Yuko