個展「invisible」2022年4月 ギャラリー犬養(札幌)

■Statement
2020年に新型コロナウィルスが札幌に到来してから5回目の個展です。この2年間、命について問いかけられる場面は多々発生し、従来の価値観が大きく揺らいでいく中で、戦争まで起きてしまいました。今までとは異なる不安定で拠り所のない時代に、私たちにとって大切なものは一体なんだろうと考えていました。一人一人の大切なものは異なるけれど、互いの大切なものを尊重して生きていけたら、もっと豊かな人間社会になれるはずなのに。
さて、今回の個展のタイトルはサン=テクジュペリ「星の王子様(Le Petit Prince)」に出てくる「L’essentiel est invisible pour les yeux.(大切なものは目に見えない)」から着想しました。パイロットだったサン=テグジュペリは第二次世界大戦の戦時下、ユダヤ人の友人にこの物語を贈りました。原文でゆっくり読み進めた物語が佳境を迎える頃、現実でもほんとうに戦争が起きてしまいました。本の中と、自分の生きる今という時代に重なりを感じたとき、読後の私も「目に見えない大切なもの」について考えさせられました。先が見えない、ウィルスが見えない、それらに翻弄される不安定な時代を生きる私たちですが、本来、私たち生きものたちにとって「目に見えない大切なもの」とは一体なんでしょう。サン=テグジュペリ風に言うのなら、小さな生きもの達はそれぞれに大切なものをその内に持つからキラキラと美しいのかもしれません。制作を通して、私にとって大切なもの、小さな生き物たちにとって大切なもの、それらが重なり合うことにも気付いたのでした。
新しい時代や社会を創造することは本来、夢に溢れた素晴らしいものなのではないかと考えています。小さなものしか作れない私にも、その一端を担うことができたなら幸いです。
2022年4月 古川祐子
