個展「L`espoir」2022年10月 kamokamo(札幌)

 

■Statement

Furukawa Yuko Solo Exhibition「L’espoir」

この度は拙個展にお越しいただき誠にありがとうございます。

これまで経験したことのない先の見えない状況が長引き、私たちが日常で以前よりストレスや不安を感じることが多くなったように思います。生き辛さを感じることもあるかもしれません。

しかしながら、私たちは人間社会にだけに生きる存在ではなく、この星に等しく生まれた存在です。国籍、性別、年齢、社会や家庭での役割等は人間社会上、私たちに与えられた単なる分類であり、その属性によって存在が蔑ろにされることがあってはならないと強く願います。多様な他者を尊重する視点と、明日を生きる希望を少しでも持ってもらえたらと願い「L’espoir」(希望)をテーマとした新作オブジェ数点と、多様な生き物にまつわるアクセサリーを制作しました。

果実や頭蓋骨は、しばしば死を象徴するものとして扱われます。しかし、私は「死」と表裏一体となる「生」に注目したいと考えました。果実や頭蓋骨を他者の生命という視点を持って観察すれば、それらは私たちに愛や希望を与えてくれるものなのではないかと考えます。

春の個展では発芽する豆の生命力を皆さんにお裾分けしたいと思い、小さな豆の作品を作りました。そして、今回の秋の個展には希望の果実を。果実とは決して、人に可愛いと言われて美味しく食べられるだけの存在ではありません。果実を生き物として観察したらどのような見方ができるでしょう。果実はその未来に向けて生命の種を宿し、その種を守る為に存在しています。果実が傷つき、食べられ、腐ったとしてもその種は世代交代していく。その意図と思いやりが形となった存在なのだと私は考えます。さて、私たち人間社会では次世代を守れているでしょうか。果実をそのような視点で捉えることが、私たちの次世代への希望に繋がるのではないかと考えました。

私事ですが、本年は19年連れ添ってくれた愛猫が亡くなりました。とても賢く誇り高い猫でした。彼女の遺骨を目にした時、その骨を美しく愛おしいと心から思いました。お別れは寂しく悲しいけれど、彼女の魂がどこかに存在しているのならこの先は永遠に幸せであって欲しいと願います。そう願い続けていけることが私の希望となりました。

希望を創造し、小さくとも暗闇を照らす灯のようなものを作っていきたい。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

2022107日 古川祐子